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笹幸恵
2019.2.7 14:36日々の出来事

『BlackBox』を読みました。

先日、伊藤詩織さんの『BlackBox』を読了した。
一気に読んだ。
むさぼるように読んだ。
じつを言うと、私はこの本をちょっと遠ざけて
いたところがあった。
生々しくて、ドロドロした感情に向き合う勇気が
なかったと言ってもいいかもしれない。
自分が20代、30代のときに受けた様々な出来事を
思い出してしまいそうで、無意識のうちに
それを避けていたのだ。
内臓がえぐられるような気持ちの悪さと嫌悪感を
覚悟しなければならなかった。

けれど、伊藤詩織さんは私よりはるかに凛々しかった。
自分に起きた出来事を、これだけ冷静に
突き放して書いて見せるとは。

ハッとしたのは、レイプされた事態をようやく把握して、
彼女が英語で某ジャーナリストを罵倒したあとの一文。

「女性が目上の男性に対して使える対等な抗議の言葉は、
自然には私の口から出てこなかった。そもそも日本語には
存在しなかったのかもしれない」

概念がなければ、そこに言葉は生まれない。
日本語には、目上の男性に対して女性が“対等に”抗議する
言葉は存在しない。昔も、今も。

淡々と話は進んでいく。
彼女の筆致はつねに、社会に対する問題提起の
視点が含まれている。
そして最も忘れてはならないのは、
某ジャーナリストの逮捕状を握りつぶした
当時の警視庁刑事部長・中村格の存在である。
週刊新潮の取材で、彼自身が
「逮捕を差し止めた」と認めている。
ひとりの女性の「魂が殺された」というのに。
ちなみに彼女の魂を殺した張本人である
某ジャーナリストは、その後、
『総理』という本を出版した。
自分はジャーナリストとして、いかに
権力の中枢に潜り込んでいるか、
総理大臣の姿を描きつつ自画自賛も忘れないという、
自己愛に満ちた見事な提灯本である。
単行本の出版は2016年6月。
執筆期間を考えれば、少なくとも半年ほど前には
すでに企画段階にあったのではないか。
さらに中身は安倍首相とツーカーの仲である
過去について書いているわけだから、
逮捕が差し止めになり、不起訴となった時期(2015年6月以降)は
もうどっぷりと政権の中枢に食い込んでいることがわかる。
逮捕されていたら、この本ももちろん誕生しなかったし、
その出版は、時期的にはまるで「何かの御礼」でも
あるかのようだ。


この本の感想を、以前『淑女我報』で語ったことがある。
また伊藤詩織さんの身に起きた出来事が一体何だったのか、
もくれん探偵事務所がちゃんと解説もしてくれている。
小林先生に某ジャーナリストから訴状が届いたという。
この機会に『BlackBox』を読んだ人もそうでない人も、
ぜひご覧ください。

「ゆきりん♡もくれん 淑女我報」#20
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笹幸恵

昭和49年、神奈川県生まれ。ジャーナリスト。大妻女子大学短期大学部卒業後、出版社の編集記者を経て、平成13年にフリーとなる。国内外の戦争遺跡巡りや、戦場となった地への慰霊巡拝などを続け、大東亜戦争をテーマにした記事や書籍を発表。現在は、戦友会である「全国ソロモン会」常任理事を務める。戦争経験者の講演会を中心とする近現代史研究会(PandA会)主宰。大妻女子大学非常勤講師。國學院大學大学院文学研究科博士前期課程修了(歴史学修士)。著書に『女ひとり玉砕の島を行く』(文藝春秋)、『「白紙召集」で散る-軍属たちのガダルカナル戦記』(新潮社)、『「日本男児」という生き方』(草思社)、『沖縄戦 二十四歳の大隊長』(学研パブリッシング)など。

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